=SDGs目標15への取り組みがもたらす社会的・経済的利益=
中小企業が実践するSDGs目標15: 環境保全とビジネス成長の融合
私たちの地球は、絶えず変化し、多くの環境的課題に直面しています。特に、陸上生態系の保護は、これらの課題に対処するための鍵となります。SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、環境の健全さを維持し、持続可能な未来を築くための重要なステップです。この記事では、中小企業の人事担当者が、目標15への取り組みを通じて、どのように環境保全とビジネスの成長を融合させることができるかに焦点を当てます。持続可能な開発への取り組みは、単に社会的責任を果たすこと以上のものです。これは、ビジネスの成長と繁栄を支え、同時に地球の健康を守るための戦略です。
- はじめに: SDGsの基本とビジネスへの影響
- 第1章 目標15の概要: 「陸の豊かさも守ろう」
- 第2章 ターゲット15.1: 陸域生態系と内陸淡水生態
- 第3章 ターゲット15.2: 森林の持続可能な経営と森林減少防止
- 第4章 ターゲット15.3: 砂漠化と土地劣化の問題と対策
- 第5章 ターゲット15.4: 山地生態系の保全とその利点
- 第6章 ターゲット15.5: 自然生息地の保護と生物多様性の重要性
- 第7章 ターゲット15.6: 遺伝資源の公正な利用と配分
- 第8章 ターゲット15.7: 密猟と違法取引の撲滅
はじめに: SDGsの基本とビジネスへの影響
この章では、SDGsの基本的な理解から、それがビジネス、特に中小企業に与える影響を詳しく掘り下げていきます。
SDGsの取り組みは、社会的責任を超えてビジネスとしての成長にも寄与します。
これらの理解と実践は、現代のビジネスリーダーにとって重要な資質の一つとなっています。
SDGsの定義と目的
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、略称SDGs)は、2015年に国連によって採択された、2030年までに達成を目指す17の目標です。
これらは、経済的、社会的、環境的持続可能性を促進するために設計されており、全ての国が対象となります。目標には、貧困の撲滅、クリーンな水と衛生へのアクセスの保証、気候変動への対策などが含まれています。
17の目標の概観と相互の関連性
SDGsの17の目標は、それぞれ独立しているように見えますが、実際には密接に関連しています。
例えば、教育(目標4)の向上は経済成長(目標8)を促進し、健康と福祉(目標3)を改善します。また、気候変動(目標13)への取り組みは、陸上生態系の保護(目標15)にも寄与します。これらの相互作用を理解することで、より効果的な持続可能性の戦略を立てることができます。
SDGsがビジネスにもたらす影響
SDGsは、新しいビジネス機会の創出、イノベーションの加速、リスク管理の強化など、企業にとって多くの利点をもたらします。特に中小企業は、地域コミュニティとの繋がりを生かし、SDGsへの取り組みを通じてビジネスの持続可能性を高めることができます。例えば、再生可能エネルギーの導入や持続可能な資材の使用は、長期的なコスト削減と環境への配慮を実現します。また、地域社会への貢献は企業の信頼性を高め、ブランド価値を向上させることができます。
第1章 目標15の概要: 「陸の豊かさも守ろう」
この章では、目標15の具体的なターゲットとそれぞれの重要性を深掘りし、中小企業や地域コミュニティがどのようにこれらの目標達成に貢献できるかを検討します。陸上生態系の保全は、単に自然を守ること以上の意味を持ち、持続可能な社会と経済の発展に不可欠な要素です。
目標15「陸の豊かさも守ろう」の紹介
持続可能な開発目標(SDGs)の中で、目標15は「陸の豊かさも守ろう」と定義されています。この目標は、地球上の陸地生態系の保護、持続可能な利用、そして生物多様性の保全を目指しています。具体的には、森林の保全、砂漠化の防止、土地の劣化の逆転、絶滅危惧種の保護など、幅広い活動が含まれています。
生態系保護の緊急性とその影響
陸上生態系は、私たち人間にとって欠かせない多くの資源とサービスを提供しています。これには、酸素の供給、食料の生産、水の浄化、気候調節などが含まれます。しかし、人口増加、都市化、農業の拡大、森林伐採などにより、これらの生態系は著しく脅威にさらされています。生態系の健全さを維持し、自然の多様性を保護することは、我々の生存に直結しているため、緊急かつ重要な課題です。
目標15が社会に与える利益
目標15に取り組むことは、環境保護に留まらず、社会全体に幅広い利益をもたらします。森林の保全は、気候変動の緩和と生物多様性の保護に貢献するだけでなく、森林依存型の地域コミュニティの生計を支えます。砂漠化の防止と土地劣化の逆転は、食料安全保障と貧困削減にも寄与します。また、持続可能な生態系は、観光産業など新たな経済機会を生み出す可能性を秘めています。
目標15のターゲット
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」には、以下のような具体的なターゲットが設定されています:
- 15.1 – 2020年までに、森林、湿地、山地、乾燥地などの陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復、持続可能な利用を確保する。
- 15.2 – 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
- 15.3 – 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ、洪水の影響を受けた土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界を目指す。
- 15.4 – 2030年までに、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行い、その能力を強化する。
- 15.5 – 2020年までに、自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、絶滅危惧種を保護し、絶滅を防止するための対策を講じる。
- 15.6 – 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を推進し、遺伝資源への適切なアクセスを促進する。
- 15.7 – 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じる。
- 15.8 – 2020年までに、外来種の侵入を防止し、これらの種による影響を大幅に減少させるための対策を導入し、優先種の駆除または根絶を行う。
- 15.9 – 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス、貧困削減戦略、会計に組み込む。
- 15.a – 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、資金の動員及び増額を行う。
- 15.b – 持続可能な森林経営のための資金調達と開発途上国へのインセンティブ付与を推進する。
- 15.c – 保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する支援を強化する。
引用:イマココラボ:SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説
第2章 ターゲット15.1: 陸域生態系と内陸淡水生態
この章では、陸域生態系と内陸淡水生態系の保全と持続可能な利用の重要性を強調し、中小企業がどのようにこれらの目標達成に貢献できるかを具体的な事例を通じて探ります。これらの生態系の健全さを維持することは、持続可能な未来への大切な一歩です。
陸域生態系と内陸淡水生態系の重要性
陸域生態系と内陸淡水生態系は、地球上の生命にとって極めて重要です。これらの生態系は、飲料水の供給、農業用水、生物多様性の保全など、私たちの日常生活に直接影響を与える多くの自然サービスを提供します。森林や湿地、河川、湖沼などは、地球の気候調節、炭素循環、土壌の健全化などに貢献しています。
保全と回復の方法と戦略
陸域生態系と内陸淡水生態系の保全と回復には、複数のアプローチが必要です。これには、森林の持続可能な管理、湿地の保護、汚染された河川の浄化、土壌浸食の防止などが含まれます。重要なのは、これらの活動が地域コミュニティの参加と協力に基づいて行われることです。また、生態系の保全に関する教育と意識向上も不可欠です。
持続可能な利用の事例:株式会社大川印刷
株式会社大川印刷は、環境印刷とSDGsを意識した新製品開発を通じて、陸域生態系の保全に貢献しています。彼らは、石油系溶剤を使用しないインクや、違法伐採されていない紙を使用することで、森林の持続可能な管理をサポートしています。また、SDGsの目標を整理したメモパッドのような新製品を開発することで、一般の人々にSDGsと生態系保全の重要性を伝えています。これらの取り組みは、環境に優しいビジネス実践の優れた例であり、他の中小企業にとっても模範となります。
第3章 ターゲット15.2: 森林の持続可能な経営と森林減少防止
この章では、森林の持続可能な経営と森林減少の防止の重要性に焦点を当て、実際の企業事例を通じて、中小企業がどのようにこれらの目標達成に貢献できるかを探ります。
森林の保護と持続可能な利用は、地球の健康を維持し、将来世代の福祉を確保するために不可欠です。
森林の持続可能な経営の重要性
森林は、地球の気候システムにとって不可欠な役割を果たしています。森林から得られる酸素、生物多様性の保護、土壌浸食の防止、水資源の供給などは、私たちの生活に直接影響を与える重要な自然サービスです。持続可能な森林経営は、これらの自然サービスを維持しながら、森林資源を有効に利用することを意味します。これには、森林の適切な伐採、再植林、多様な生態系の維持が含まれます。
森林減少防止のアプローチ
森林減少の防止には、違法伐採の阻止、森林破壊の原因となる農業実践の改善、森林火災の予防などが必要です。これを達成するためには、地域コミュニティや民間企業、政府の連携が重要です。また、森林資源の持続可能な利用を促進するための法律や規制の整備も不可欠です。
持続可能な利用の事例:フロムファーイースト株式会社
フロムファーイースト株式会社は、カンボジアの荒れ地に植林を行う「森の叡智プロジェクト」を実施しています。このプロジェクトでは、カンボジアの土地を利用してオーガニックコットンを中心とする森づくりを行い、FSC認証を取得しています。これにより、森林の持続可能な管理を実践し、地域の生態系保護に貢献しています。
第4章 ターゲット15.3: 砂漠化と土地劣化の問題と対策
この章では、砂漠化と土地劣化の問題を深く掘り下げ、中小企業がどのようにこれらの問題に対処し、持続可能な土地利用に貢献できるかを探求します。地球上の土地資源を守ることは、将来世代に対する私たちの責任であり、持続可能な開発の重要な要素です。
砂漠化と土地劣化の影響
砂漠化と土地劣化は、農業生産性の低下、生物多様性の喪失、地域コミュニティの生計困難など、多くの深刻な影響を引き起こします。土地の健全性が損なわれると、食料安全保障と生態系の持続可能性が脅かされます。砂漠化の進行は、気候変動の影響を受けやすい地域では特に深刻であり、持続可能な開発への大きな障害となり得ます。
土地劣化の逆転に向けた対策
土地劣化の逆転には、持続可能な土地管理、回復可能な農業実践、再生可能エネルギーの使用などが必要です。これには、過放牧、過度な灌漑、不適切な土地利用の改善が含まれます。地域コミュニティとの協力、科学的知見に基づく実践、そして政策立案者による支援が、土地劣化の逆転に不可欠です。
持続可能な利用の事例:株式会社TBM
株式会社TBMは、新素材「LIMEX」の製造によって、持続可能な土地利用に貢献しています。LIMEXは、国内自給率100%超の石灰石を主原料とし、紙やプラスチックの代替品として使用されます。これにより、森林資源や水資源の消費を減らし、土地劣化の防止に役立っています。
第5章 ターゲット15.4: 山地生態系の保全とその利点
この章では、山地生態系の保全の重要性とその方法について探求し、中小企業がどのようにこれらの生態系の保護に貢献できるかを考察します。山地生態系は、私たちの生活に多大な利益をもたらすと同時に、地球の健康を維持するためにも重要です。
山地生態系の役割と利点
山地生態系は、その独特の生物多様性、水源地としての役割、そして美しい自然景観により、地球環境において重要な位置を占めています。これらの生態系は、多くの種の生息地を提供し、地球の水循環における重要な役割を果たしています。山地はまた、地滑りや洪水などの自然災害から人々を守るバリアの役割も果たします。
保全のための施策
山地生態系の保全には、適切な土地利用計画、持続可能な農業実践、生物多様性の保護が必要です。これには、過度な開発や違法伐採の防止、在来種の保護、自然公園や保護区の設定などが含まれます。地域コミュニティの参加と支援は、これらの施策の成功に不可欠です。
持続可能な利用の事例:建設環境研究所
建設環境研究所は、レーダーを用いた鳥の飛翔地点の観測や、GPSを用いたタヌキの行動範囲の把握などを通じて、山地生態系の研究に貢献しています。これらの取り組みは、山地生態系の理解を深め、適切な保護策を講じるための重要なデータを提供しています。
第6章 ターゲット15.5: 自然生息地の保護と生物多様性の重要性
この章では、自然生息地の保護と生物多様性の維持がなぜ重要かを詳細に探求し、中小企業がこれらの課題にどのように取り組むことができるかを考察します。生物多様性の保護は、持続可能な未来を築くための基盤となり、地球上のあらゆる生命にとって重要な価値を持ちます。
自然生息地の保護の必要性
自然生息地の保護は、地球上の生物多様性を維持する上で重要な役割を果たします。多くの種がその生息地を失うことで、絶滅の危機に瀕しています。生物多様性の喪失は、生態系サービスの低下、食料安全保障の脅威、さらには新たな疾病の出現など、私たち人間にも直接的な影響を及ぼします。
生物多様性の維持の方法
生物多様性の維持には、自然保護区の拡大、絶滅危惧種の保護プログラム、生態系の回復と再生などが必要です。地域コミュニティの参加と協力による保護活動は、生物多様性の維持において特に効果的です。また、生物多様性に配慮した土地利用計画や開発プロジェクトの実施も重要です。
持続可能な利用の事例:建設環境研究所
建設環境研究所は、希少生物のモニタリングを通じて自然生息地の保護に貢献しています。レーダーやGPSを使用した動物の行動範囲の研究は、生物多様性保護のための具体的なデータと洞察を提供しています。これにより、保護対策の計画と実施がより効果的になります。
第7章 ターゲット15.6: 遺伝資源の公正な利用と配分
この章では、遺伝資源の公正な利用とその重要性について探求し、中小企業がどのようにこの目標に貢献できるかを詳しく考察します。遺伝資源の公正な管理は、地球の生物多様性を守り、持続可能な未来に向けた責任ある行動を促します。
遺伝資源の公正な利用とは
遺伝資源とは、植物、動物、微生物などの生物から得られる遺伝的な材料を指します。これらの資源は、医薬品、農業、化粧品業界などで広く利用されています。公正な利用とは、これらの資源を使う際に、原産国や地域コミュニティに適切な利益を還元することを意味します。これにより、生物多様性の保護と持続可能な利用が促進されます。
利益の公平な配分
遺伝資源の利用から得られる利益の公平な配分は、国際的な公正を確保し、生物多様性の保護に貢献します。このためには、アクセスと利益配分に関する国際的なルールの整備と遵守が必要です。また、地域コミュニティがその資源の管理と利用から公正に恩恵を受けることが重要です。
遺伝資源管理のモデル:UCC上島珈琲
UCC上島珈琲は、エチオピアでのコーヒー栽培を通じて、遺伝資源の公正な利用に取り組んでいます。彼らは、経済的豊かさと自然環境の保護を両立させる栽培方法を実践し、レユニオン島で幻のコーヒー「ブルボンポワントゥ」の再生プロジェクトを進めています。これらの取り組みは、原産地での生物多様性の保護と地域経済の発展に貢献しています。
第8章 ターゲット15.7: 密猟と違法取引の撲滅
密猟と違法取引の現状
密猟と違法取引は、世界中で多くの野生動植物種に深刻な脅威をもたらしています。これにより、絶滅危惧種の数が増加し、生態系のバランスが崩れることがあります。違法取引は、しばしば国境を越える犯罪として行われ、地域社会の経済と安全にも悪影響を及ぼします。
対策と法的枠組み
密猟と違法取引を撲滅するためには、強固な法的枠組みとその徹底した執行が必要です。国際的な協力と情報共有、野生生物の保護と管理のための資源の確保、地域コミュニティの支援と教育が重要な要素です。また、野生生物製品の消費者に対する啓発活動も不可欠です。
撲滅への取り組み事例:WWFジャパン
トラが減り続けてきた 2つの原因
<森林減少と密猟>
1900年代初頭には、 約10万頭いたといわれるトラ。2010年の時点での推定個体数は、わずか約3,200頭にすぎません。
これほど急激に減ってしまった 原因は大きく2つ。森の減少と、乱獲・密猟です。
100年間で、トラがすむ森は 95%も失われてきました。
その中で、バリトラ、ジャワトラ、 カスピトラの3亜種が絶滅。中国の亜種アモイトラも、 ほぼ絶滅したとみられています。
密猟や違法取引をなくすために
滋養強壮の伝統薬として人気の虎骨をはじめ、トラに関連する違法な取引は、 アジア諸国を中心に今も続いています。
WWFは、野生生物の違法取引 (IWT-Illeagal Wildlife Trade)の撲滅をめざす活動ネットワーク拠点「IWT Hub」を設置。
運輸、金融、eコマース(電子商取引)に携わるセクターや、税関、警察などとの連携を進めています。
第9章 ターゲット15.8: 外来種の侵入防止と生態系への影響
この章では、外来種の侵入防止と管理の重要性を探求し、中小企業がどのようにして生態系の保護に貢献できるかを検討します。外来種の問題に対処することは、地域の生態系を守り、生物多様性を保全するために不可欠です。
外来種の侵入とその影響
外来種とは、自然の生態系にとって異なる環境から持ち込まれた種を指します。これらの種が侵入すると、在来の生物種に害を与えたり、生態系のバランスを崩したりすることがあります。外来種は、地域の生態系に深刻な影響を与え、絶滅危惧種の数の増加や生物多様性の減少を引き起こす可能性があります。
侵入防止と管理の戦略
外来種の侵入を防ぐためには、国境での厳格な検疫措置と生態系への監視が重要です。また、既に侵入してしまった外来種に対しては、適切な管理と駆除が必要です。地域コミュニティ、政府機関、非政府組織(NGO)間の連携による情報共有と協力が、これらの対策の成功に不可欠です。
活動事例:認定NPO法人 生態工房
アカミミガメが引き起こす問題
生態系への被害
野外個体数の増加、分布拡大
1990年代以降、野外でのアカミミガメの蔓延が数多く報告されるようになりました。いくつか例を挙げると、河川水辺の国勢調査では全国の109の一級水系のうち34水系でアカミミガメの生息が確認されました(リバーフロント整備センター1998)。「日本全国カメさがし」では、全国から寄せられた淡水ガメ目撃情報の62%がアカミミガメでした(日本自然保護協会2003)。大阪府の大正川では捕獲されたカメの個体数の36.2%がアカミミガメでした(西堀ら2011)。谷口・亀崎(2011)は筑後平野や三重南部、高知西部などにはカメの8割以上がアカミミガメで占められている地域があることを報告しました。東京都の善福寺公園では、捕獲されたカメの56%をアカミミガメが占め、在来種のニホンイシガメは3%という危機的な状況になっていました(片岡ら2007)。
雑食性のアカミミガメは、水中のさまざまな動植物を摂食するので、同じような食物を利用している在来カメの食物やすみかを奪う恐れがあります(安川2002)。
水生植物の捕食
アカミミガメは雑食性ですが、水生植物を好む傾向があります。植物園の池や堀では、浮葉植物やハスが消失するほどの大きな被害を受けている場所があります。佐賀城では濠を埋めるほど群生していたハスやヒシが(有馬2012)、兵庫県の篠山城跡南堀ではハスが、福岡県では水路を覆っていたオニビシが、アカミミガメによって消失しました。滋賀県の彦根城の堀では希少種オニバスが食害され、実態調査が行われています。
水鳥の捕食
アカミミガメが高密度に生息している池では、初夏、水面にいるカイツブリやカルガモのヒナがアカミミガメによく襲われます。ヒナが移動すると数頭のアカミミガメが追跡し、水中から咬み付いて飲み込みます。連続的にパクパク飲み込むことができ、ヒナの数が1日で半数以上減ってしまうことも珍しくありません。
農業への被害
徳島県鳴門市では近年、特産品のレンコンの生育不良が深刻化し、調査の結果、アカミミガメによる食害であることがわかりました。春に伸長した新芽をアカミミガメが咬むことによって成長の遅れや葉付きの不良が生じ、収量の低下につながっていることがわかりました。
2011年のレンコンの被害額は1,500万円と推計され、カメ専門家を交えて徳島県と鳴門市、JA、生産者などが駆除を行っています。
参考:環境省 「アカミミガメ対策推進プロジェクト」https://www.env.go.jp/press/101292.html
第10章 ターゲット15.a/b/c: 資金動員、森林経営、違法取引対策への支援
この章では、資金動員、森林経営、違法取引対策の重要性を深掘りし、中小企業がこれらの分野でどのように貢献できるかを探ります。持続可能な森林経営と違法取引の阻止は、地球の生態系の健全さと多様性を維持するために、企業による積極的な支援が不可欠です。
資金動員の重要性と方法
持続可能な森林経営と生物多様性の保護には適切な資金調達が必要です。このためには、国際的な協力、公的資金、民間投資を含む多様な財源からの資金動員が重要です。資金は、森林保護、砂漠化の防止、絶滅危惧種の保護など、具体的な活動への支援に使われます。
森林経営と違法取引対策
持続可能な森林経営は、森林の健全さを維持し、地域社会への利益をもたらすことができます。これには、適切な伐採計画、再植林、多様な生態系の維持が含まれます。また、違法な森林伐採とその製品の取引に対する強固な法律とその実施が必要です。
支援と協力の事例:武州工業株式会社
武州工業株式会社は、太陽光発電などの温暖化対策やフェアトレードへの取り組みを通じて、持続可能な森林経営に貢献しています。これらの活動は、森林資源の持続可能な利用をサポートし、地域経済の発展に貢献しています。
まとめ: 目標15「陸の豊かさも守ろう」の重要性と中小企業の役割
この章を通じて、目標15の達成に向けて中小企業が果たすべき役割とその重要性を強調しました。
中小企業は、持続可能な開発のためのグローバルな取り組みにおいて、革新性と柔軟性を活かし、重要な役割を担うことができます。それぞれの企業が取る小さな一歩が、持続可能な未来への大きな一歩となるのです。
目標15の要点のまとめ
SDGsの目標15は「陸の豊かさも守ろう」というテーマで、陸上生態系の保護と持続可能な利用を促進することを目指しています。この目標には、森林の保全、砂漠化の防止、土地劣化の逆転、絶滅危惧種の保護など、多岐にわたる活動が含まれています。これらの取り組みは、気候変動の緩和、生物多様性の維持、食料安全保障の強化に直接貢献し、人間の福祉と地球の健康を守るために不可欠です。
中小企業の取り組むべきアクション
中小企業は、地域社会に密接に結びついており、環境保護活動に大きく貢献できる立場にあります。具体的なアクションとしては、持続可能な資源の利用、環境に優しい製品やサービスの開発、地域の植林や清掃活動への参加などが挙げられます。これらの活動は、企業の社会的責任を果たすと同時に、地域コミュニティの環境保全への関心を高めることにもつながります。
持続可能な未来への貢献
目標15への取り組みは、単に自然を守ること以上の意味を持ちます。これは、持続可能な社会と経済の発展への投資であり、将来世代に豊かな自然環境を継承することにもつながります。中小企業が環境への影響を意識し、持続可能なビジネスプラクティスを採用することで、より良い未来を築くための重要なステップを踏むことになります。企業が地球環境に与える影響を理解し、責任ある行動を取ることは、ビジネスの成功と地球の持続可能性を実現するために不可欠です。