社会保険の加入要件と手続き|短時間労働者・適用拡大を中小企業人事向けに解説【2026年10月改正】

社会保険の届出書類とペンのイメージ 人事労務

社員を採用したとき、パート社員の勤務時間を増やしたとき、「社会保険に入れますか」と相談されたとき。人事が最初に確認したいのは、年収だけではなく、会社の適用状況と本人の働き方です。

2026年10月1日から、短時間労働者の加入要件だった「所定内賃金月額8.8万円以上」は撤廃されました。 一方、企業規模要件は現在も原則51人以上です。36人以上への拡大は2027年10月からで、現在の判定に先取りしません。

この記事では、中小企業の人事担当者が加入対象を判断し、本人への説明、届出、給与設定、勤務条件変更時の再判定まで進める手順を整理します。制度の確認基準日は2026年10月10日です。ここでいう社会保険は、勤務先で加入する健康保険・厚生年金保険を指します。雇用保険・労災保険には別の適用ルールがあります。

改正後の要件は日本年金機構の適用拡大案内で確認できます。

社会保険の加入判定から手続きまでの8ステップ

会社・事業所の適用状況を確認 → 正社員か短時間労働者か確認 → 労働時間・雇用見込み・学生区分を確認 → 加入対象を判定 → 本人へ説明 → 資格取得届等を提出 → 給与・保険料設定 → 勤務条件変更時に再判定

この順番は、ぼっち人事LABとしての実務提案です。加入要件や届出期限は法令に従い、自社の担当分担、給与締日、保険者に合わせて確認記録を作ります。

採用時は労働条件通知書・雇用契約書、通常労働者の所定労働時間と日数、契約更新の条件、学生区分、資格取得時の報酬見込みをそろえます。変更時は、変更内容だけでなく「いつから変わるか」を記録してください。

入退社全体の書類収集や社内調整は中小企業の入社・退職手続きで確認し、社会保険の加入判定は本記事で整理します。

1.会社・事業所の適用状況を確認する

法人・個人事業所と、短時間労働者の適用は分けて確認する

法人の事業所は、常時使用する人がいる場合、原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。個人事業所は、現在は法定の業種で常時5人以上の従業員を使用する場合などが強制適用となります。強制適用以外でも、認可を受けて任意適用事業所となる場合があります。

次に、その適用事業所で「4分の3基準に届かない短時間労働者」も加入対象になるかを確認します。対象となるのは特定適用事業所、任意特定適用事業所、国・地方公共団体に属する事業所です。

「会社が社会保険に加入していること」と「短時間労働者も適用されること」は、確認する段階が異なります。 「51人未満だから正社員も加入しない」という判断はできません。

個人事業所の業種拡大と短時間労働者の企業規模拡大も別の改正です。個人事業所の適用に迷う場合は、事業内容と現在の適用状況を年金事務所へ確認してください。適用事業所と被保険者の公式案内が確認の入口です。

「51人以上」は会社の在籍者全員を数える基準ではない

現在の企業規模要件は、原則として短時間労働者を除く厚生年金保険の被保険者数で判断します。共済組合員を含み、1年のうち6か月以上、51人以上になることが見込まれる企業等が対象です。

法人は同一法人番号のすべての適用事業所を合計します。個人事業所は事業所単位です。一つの店舗だけの人数や、社会保険に入っていない人まで含めた在籍者数で判定しないようにしましょう。

既に特定適用事業所となっている会社で人数が減ったときも、短時間労働者を一斉に資格喪失させるのではなく、該当状況と必要な手続きを確認します。

2.正社員・パートの加入要件を判定する

正社員・通常労働者と、4分の3基準を満たす人

適用事業所に常用的に使用される人は、適用除外に当たらなければ加入対象です。正社員という名称だけでなく、使用関係、年齢、雇用期間などを確認します。報酬が支払われる試用期間も、原則として判定の対象になります。

パート・アルバイトでも、同じ事業所で同様の業務をする通常労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が4分の3以上なら加入対象です。

たとえば通常労働者が週40時間・月20日なら、比較する基準は週30時間以上・月15日以上です。この両方を満たす人について、企業規模51人以上や「学生ではないこと」を追加条件にしません。この例の時間・日数は説明用であり、自社の通常労働者の条件から計算してください。

厚生年金保険は原則70歳未満が対象です。70歳以上は健康保険や70歳以上被用者の届出を別途確認し、75歳到達等では後期高齢者医療への移行も確認します。

正社員/短時間労働者の加入判定表

判定する人先に確認する条件加入判断のポイント
正社員・通常労働者適用事業所、常用的使用関係、年齢・雇用期間等適用除外がなければ加入対象。51人要件を課さない
パート等で4分の3基準を満たす人週所定時間と月所定日数の両方両方4分の3以上なら加入対象。学生という理由だけで除外しない
時間または日数が4分の3未満の人短時間労働者の対象事業所、週20時間以上、学生区分、2か月超の雇用見込み等必要条件をすべて確認。一般の賃金8.8万円要件は撤廃済み
最低賃金の減額許可を受ける短時間労働者所定内賃金月8.8万円未満に当たるか特定減額特例対象者は別扱い。本人申出による任意加入等を確認

日々雇用、季節的業務、臨時的事業などには別の適用除外と継続使用のルールがあります。特殊な雇用形態は、この表だけで確定せず日本年金機構の適用除外一覧へ進んでください。法令は厚生年金保険法9・12条と健康保険法3条で確認できます。

週20時間は、原則として契約上の所定労働時間で見る

4分の3基準に届かない人は、原則として就業規則・雇用契約書等の週所定労働時間が20時間以上かを確認します。月単位で定める場合は「月の所定労働時間×12÷52」で週に換算します。周期的に勤務時間が変わる場合は、その定め方に応じた取扱いを確認します。

契約上は20時間未満でも、実際には恒常的に20時間以上働いているケースには注意が必要です。実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その状態が続く、または続く見込みがある場合は、3か月目の初日に資格を取得します。単発の残業だけと混同せず、勤怠と継続見込みを照合します。

詳しくは月単位の所定労働時間Q&Aと恒常的な実労働時間のQ&Aを参照してください。

学生区分は「学生証があるか」だけで決めない

短時間労働者の適用では、昼間の大学生などは原則として学生除外に該当します。ただし、休学中、定時制・通信制課程、卒業後も引き続き同じ事業所で使用される予定の人などは例外があります。

学校・課程、休学の有無、卒業後の勤務予定を確認してください。また、4分の3基準を満たす学生は、学生という理由だけでは対象外になりません。学生区分と例外の公式Q&Aを本人の状況と照らし合わせます。

雇用期間が2か月以内でも、更新見込みを確認する

最初の契約が2か月以内でも、その期間を超えて雇用される見込みがある場合は、原則として契約当初から加入します。契約書に更新する・更新する場合がある旨が書かれているか、同じ事業所で同様の契約を更新した実績があるかなどを確認します。更新しないことについて労使が合意している場合の扱いも、事実に基づいて判断します。

「2か月たってから加入する」「試用期間が終わるまで待つ」と一律に処理しないでください。当初は更新見込みがなく、その後に更新へ合意した場合は、更新が見込まれるに至った日も確認します。雇用期間の公式Q&Aに具体的な取扱いがあります。

3.2026年10月の改正と、今後の適用拡大を区別する

改正前後の比較表:8.8万円と51人は同時に撤廃されていない

項目2026年9月まで2026年10月1日以降
一般の短時間労働者の賃金要件所定内賃金月8.8万円以上撤廃。一般の加入条件として年収106万円・月8.8万円で線引きしない
週所定労働時間20時間以上20時間以上を維持
学生区分・雇用見込み学生除外と例外、2か月超の雇用見込み等を確認引き続き確認
企業規模原則51人以上現在も原則51人以上。36人以上は2027年10月から
最低賃金の減額許可対象者一般の賃金要件で判定特定減額特例対象者の適用除外・任意加入制度を確認
保険料調整制度今回の制度は未開始対象事業所の申出による制度を開始

一般の賃金要件が撤廃されても、報酬額を調べなくてよいわけではありません。報酬額は標準報酬月額や保険料を決めるために必要です。また、2026年9月以前の期間について加入漏れをさかのぼって処理するときは、その期間に施行されていた賃金要件も確認します。

最低賃金法の減額許可を受け、所定内賃金月8.8万円未満となる短時間労働者は「特定減額特例対象者」として原則適用除外ですが、本人の申出による加入ができます。既に加入している人の扱いなども含め、2026年10月施行の公式Q&Aで個別確認してください。この例外を、一般の短時間労働者の賃金要件として残さないことが大切です。

企業規模要件の今後の拡大スケジュール

時期企業規模の基準その時点で新たに対象となる規模
現在~2027年9月51人以上現在施行中
2027年10月36人以上36~50人
2029年10月21人以上21~35人
2032年10月11人以上11~20人
2035年10月企業規模要件を撤廃10人以下も対象

これは短時間労働者の企業規模要件の段階的拡大です。2035年に「すべての事業所で、勤務条件にかかわらず全員加入する」という意味ではありません。事業所の適用状況、労働時間、学生区分等の確認は必要です。

人事は、自社が次に対象となる時期、対象候補者、保険料の見込み、説明・届出の担当を事前に整理します。現在の判定表と将来の準備リストを分けて持つと、説明が混乱しにくくなります。厚労省の拡大スケジュールと日本年金機構の案内が確認先です。

50人以下でも、任意特定適用事業所なら対象になり得る

特定適用事業所の規模に届かなくても、労使の同意に基づいて事業主が申し出ることで、任意特定適用事業所になることができます。同意対象者の2分の1以上の直接同意など、所定の方法で同意を確認します。

この制度は、希望したパート社員一人だけを選んで加入させる仕組みではありません。対象事業所になった後は、条件を満たす短時間労働者について資格取得届が必要です。該当日と資格取得日は原則として申出の受理日になります。

事業所自体を社会保険の対象にする「任意適用」と、短時間労働者への適用を広げる「任意特定適用」は区別してください。任意特定適用の手続きで、同意対象者と添付書類を確認します。

4.加入対象と判定したら、本人へ説明する

扶養に残れるかより先に、本人の加入対象かを確認する

「年収が扶養の基準以内だから、勤務先の社会保険に入らなくてよい」とは限りません。本人が加入要件を満たす場合は、勤務先での加入を進めます。税の扶養、健康保険の被扶養者認定、本人の社会保険加入は、それぞれ別に判断する制度です。

説明では、加入する根拠、資格取得日、保険料の見込み、給与からの控除時期、現在の健康保険等からの切替え、家族の扶養に関する連絡を順に確認します。「入りたいか」だけで法定の加入を決めず、本人が状況を理解できる説明を行いましょう。

扶養・税・年収の相談全体は年収の壁を相談されたときの確認ガイドで整理できます。

保険料調整制度は、会社と本人の対象要件を確認してから案内する

2026年10月から始まった保険料調整制度は、対象の事業所が申し出ることで、短時間労働者の保険料負担を通算3年間軽減する制度です。新たに任意特定適用事業所となる場合などが対象で、2027年10月以降の適用拡大による事業所も対象となります。

既に特定適用事業所・任意特定適用事業所となっている会社等は、今回の制度を一律に利用できません。本人側も短時間労働者としての加入、標準報酬月額12万6,000円以下などの条件があり、複数事業所での加入や保険料免除中などの除外を確認します。

制度は事業所単位で、対象者の一部だけを選んで適用できません。開始申出は所定期限内に必要で、原則として受付月から利用し、過去へさかのぼれません。事業主が一時的に追加負担した保険料は後の納付額から調整される仕組みです。賞与や介護保険料等まで同じように減額するのではなく、届出・通知・公式料額表に基づいて給与を設定します。

まず調整制度の対象事業所と期限、対象被保険者、開始申出を確認してから、本人へ利用可否と負担見込みを説明してください。

5.資格取得・資格喪失の届出を進める

資格取得日は、加入要件を満たした日から確認する

一般の資格取得では、加入対象として採用された日、事業所が適用された日、勤務条件の変更で対象となった日などを確認します。会社が届出を送った日や、給与締日を資格取得日に置き換えないでください。

資格取得届は、原則として事実発生から5日以内に提出します。氏名・生年月日、個人番号または基礎年金番号、資格取得日、報酬月額、短時間労働者の区分などを確認し、個人番号は社内の取扱ルールに従って管理します。

協会けんぽか健康保険組合かによって提出先も確認します。本人が家族を扶養する場合は、被扶養者認定に必要な情報を確認し、該当する届出へつなげます。マイナ保険証の利用や必要な資格確認書の交付等も案内してください。資格取得の公式手続きと最新の採用時届書を使用します。

退職と勤務条件変更では、資格喪失日の確認方法が違う

退職による資格喪失日は、原則として退職日の翌日です。たとえば10月31日退職なら11月1日が資格喪失日です。資格喪失届は原則として事実発生から5日以内に提出します。

勤務条件の変更で加入基準を満たさなくなった場合は、原則として、その事実が発生した日の翌日が資格喪失日です。
ただし、時間が減っても4分の3基準や短時間労働者の条件を満たす場合は加入が続くため、契約変更の内容を先に再判定します。
変更内容や被保険者区分によって取扱いが異なる場合があるため、最新の届書・記載要領で確認します。

資格確認書等が交付されている場合は回収等を確認し、本人には退職・喪失後の健康保険の切替えを案内します。資格喪失の公式手続きで喪失原因ごとの日付と必要書類を確認してください。

6.給与・保険料を設定し、報酬変更を管理する

標準報酬月額には、非課税の通勤手当も含める

健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料は、報酬を等級に当てはめた標準報酬月額等を基に計算します。毎月の手取り額にそのまま保険料率を掛けるものではありません。

報酬には基本給だけでなく、残業手当、通常の通勤手当、住宅手当などが含まれます。所定の評価による現物給与も確認します。通勤手当は所得税で非課税でも、通常は社会保険の報酬です。実費弁償、臨時に受けるもの、賞与等は、名称だけでなく性質と支給方法で区分します。

資格取得時は実績がまだないため、労働契約等と公式の算定方法から報酬月額を届け出ます。月途中の入社で初月給与が少なくても、その実支給額をそのまま報酬月額にしないようにしましょう。取得時の標準報酬決定と報酬・保険料の案内で確認できます。

通勤手当の複数月支給やテレワーク時の交通費などは、通勤手当の支給・計算実務で詳しく整理しています。

算定基礎届と月額変更届を、加入判定と分けて確認する

手続き確認する場面人事・給与が見る点
資格取得時の報酬決定入社・加入開始契約と所定の算定方法から報酬月額を確認
算定基礎届(定時決定)毎年の定期見直し原則7月1日現在の対象者、4~6月の報酬、支払基礎日数等を確認。原則7月10日までに届出、9月から反映
月額変更届(随時改定)昇給・降給、固定的な手当等の変更原則固定給変動、3か月平均の等級差、支払基礎日数等を確認。該当すれば4か月目から改定

定時決定では通常は支払基礎日数17日以上、短時間労働者は11日以上の月が算定対象になります。4分の3基準で加入するパート等には別の取扱いもあり、「パートなら全員11日」と設定しないでください。6月1日以降の資格取得など、算定基礎届の対象から除かれる場合もあります。期限が休日に当たる場合は翌営業日を確認します。

随時改定は、原則として固定的賃金の変動、変動後3か月の平均による2等級以上の差、各月の支払基礎日数などがそろった場合に行います。上下限等の例外や、固定給の変動方向も確認します。残業代だけが増えた月に、直ちに月額変更届を出すという扱いではありません。

勤務時間を増減したときは、まず加入対象・加入区分を再判定し、加入が続く場合でも報酬の随時改定や区分変更の届出を別に確認します。定時決定と随時改定が確認先です。

7.人事が確認する加入手続きチェックリスト

工程確認・記録すること
□ 事業所確認強制・任意適用、特定・任意特定適用、保険者、法人全体の人数確認
□ 本人の働き方週所定時間・月所定日数、通常労働者との比較、雇用見込み、学生区分、年齢、適用除外
□ 加入判定判定日、根拠資料、取得日または非該当の理由、次回確認の時期
□ 本人説明加入根拠、保険料見込み、控除時期、扶養・国保等の切替え、必要書類
□ 届出資格取得届等の区分・報酬・日付、提出先、期限、受付結果、不備の解消
□ 給与設定決定通知の標準報酬月額、保険者の料額表、介護保険等、本人・会社負担、控除月
□ 改定・調整算定基礎・月額変更の予定、保険料調整制度の対象・申出・通知確認
□ 再判定契約更新、時間・日数変更、休学・卒業、企業規模変化、退職の発生日

このチェックリストは社内での確認漏れを防ぐための提案です。届出が済んだら、通知内容と給与設定が合っているかまで照合します。受理されたことだけで給与担当への引継ぎを終えないようにしましょう。

社会保険の加入相談で迷いやすい3つの場面

50人以下の会社で、週25時間働くパート社員を採用した

まず4分の3基準を確認します。基準を満たさず、会社が特定適用事業所でも任意特定適用事業所でもない場合、週25時間という条件だけでは短時間労働者としての加入を確定できません。会社の適用区分と将来の拡大時期を確認します。

51人以上の対象企業で、週20時間勤務の社員から扶養相談を受けた

週所定時間、雇用見込み、学生区分、適用除外を確認します。加入要件を満たすなら、本人加入を前提に説明と届出を進めます。一般の短時間労働者について、年収106万円未満や所定内賃金月8.8万円未満という理由で加入対象から外しません。

パート社員の勤務時間を減らすことになった

契約変更日と変更後の時間・日数を確認し、4分の3基準、短時間労働者の条件を再判定します。加入が続くなら、区分変更や報酬改定の要否を確認します。対象外となるなら、資格喪失日、届出、本人の健康保険等の切替えへつなげます。

社会保険の判断を一人で抱える必要はありません。雇用契約・勤怠・適用区分・変更日をそろえれば、年金事務所や加入先の保険者へ具体的に相談できます。採用と勤務条件の変更を、加入判定の見直しが必要になるタイミングとして管理してください。

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