ひとり人事が自分らしく働くには?強みの整理と仕事の配分を見直す手順

ひとり人事が自分らしく働くために、強みと仕事の配分を見直す5つの手順を示した図解 働き方

社員からの相談、給与計算の確認、採用の連絡、入社準備。目の前の仕事をこなすうちに、「自分は何が得意なのか」「これからどんな働き方をしたいのか」を考える時間がなくなっていませんか。

ひとり・少人数で人事を担う方が働き方を見直すときは、大切にしたいこと、これまでに役立った強み、負担になっている業務を分けて整理するところから始めてみましょう。そのうえで、変更したいことを一つ選び、上司と相談できる形にまとめます。

この記事では、今の仕事に向き合いながら、自分らしい働き方を具体化する手順を紹介します。人員不足や業務量の問題まで、自分の努力だけで解決する必要はありません。

ひとり人事にとって「自分らしく働く」とは

大切にしたいこと・強み・求められる役割を分ける

本記事では「自分らしく働く」を、大切にしたい価値観や強みを意識しながら、会社から求められる役割と無理のない働き方をすり合わせていくこと、と整理します。

例えば、「社員の話を丁寧に聞きたい」は大切にしたいこと。「話を整理し、確認すべき点を見つけられる」は経験から見えた強みです。一方、給与の確認や各種手続きを期限内に進めることは、担当者として求められる役割に当たります。

この三つを分けると、「対話を大切にしたいけれど、締切前の随時対応が重なっている。相談を受ける時間と処理に集中する時間を調整できないか」と、具体的な課題に置き換えられます。

好きな仕事だけを選ぶのではなく、無理のある配分を相談する

得意な仕事だけに担当を絞るのは、少人数の職場では難しい場合があります。それでも、担当する範囲、進め方、確認を受ける相手、時間の配分など、相談できる点はないかを考えられます。

「苦手な仕事をなくす」と決める前に、「確認してくれる人がいれば進められるのか」「特定の時期に仕事が集中しているのか」を見てみましょう。負担の原因によって、必要な支援は変わります。

まずは価値観・強み・負担を整理する

大切にしたい働き方を具体的な場面で書く

「やりがいがほしい」「自分に合う仕事がしたい」だけでは、何を変えたいのかが見えにくくなります。最近の仕事を振り返り、納得できた場面や、引っ掛かりを感じた場面を書き出してみてください。

例えば、「確認する時間を確保でき、安心して処理を終えられた」「社員に説明する時間が足りず、急いで話を切り上げた」といった場面です。そこから、正確さ、対話、見通しを持って働けることなど、自分が大切にしたいものを探します。

次の表は、整理のために当サイトが作成したものです。記入例は実在の担当者の事例ではありません。紙やメモに、自分の言葉で書き換えて使ってください。

整理する項目自分への問い人事業務の記入例(仮想例)
大切にしたいことどんな場面で納得して働けたか説明する時間を取り、相手の疑問を確認できた
経験から見える強みどんな行動が仕事に役立ったか問い合わせを分類し、確認先を整理できた
負担になっていることいつ、何が重なると進まなくなるか締切前に随時の依頼が入り、確認作業が中断する
今後やってみたいこと今の仕事で少し試したいことは何かよくある質問への説明をわかりやすく整えたい

最初からすべてを埋める必要はありません。思い出せる場面を一つ書くところからで十分です。

強みは性格ではなく、役立った経験から探す

「明るい」「几帳面」といった性格の言葉だけでは、仕事でどう活かせるかが伝わりにくいことがあります。「どんな状況で、何をして、何に役立ったか」まで書いてみましょう。

例えば、「几帳面」を「提出書類の不足項目を一覧にし、確認漏れを見つけた」と言い換えると、強みを使った場面が見えてきます。大きな成果や表彰がなくても構いません。説明を頼まれること、同僚から助かったと言われたこと、繰り返し担当している仕事も手掛かりになります。

厚生労働省のマイジョブ・カードの在職者向け案内でも、これまでの経験や価値観、強み・能力を整理する方法が紹介されています。自分だけでは言葉にしにくいときの補助に使えます。

苦手・経験不足・業務量の多さを混同しない

仕事が進まない原因を、すぐに「自分の能力が足りないから」と決めないようにしましょう。

初めて扱う手続きなら、資料や確認相手が必要かもしれません。判断を待つ時間が長いなら、承認の進め方に課題があるかもしれません。複数の締切が重なっているなら、担当の配分や応援を考える必要があります。

知識を学ぶことで対応できる問題と、人員・権限・業務量を調整する問題を分けておくと、相談したい支援を示しやすくなります。

仕事の配分を見直す5つの手順

ここから紹介する手順は、人事担当者が相談の準備をするための当サイトの提案です。ジョブ・カードの公式手順ではありません。

1.担当業務と締切を書き出す

まず、定例業務と随時発生する業務を書き出します。業務名、締切、作業のおおよその所要時間、確認相手を、わかる範囲で添えましょう。

給与計算や届出だけでなく、問い合わせへの回答、書類の差戻し、他部署からの情報待ちも含めます。正確な時間を計ること自体を目的にせず、どの時期に何が重なるかを見えるようにします。

担当範囲を整理しにくい場合は、中小企業の人事管理で押さえたい業務と進め方も参考にしてください。

2.維持する業務と見直したい業務を分ける

次に、期限や正確さを守る必要がある業務と、進め方を相談できそうな業務を分けます。

例えば、給与の確認そのものを省くのではなく、確認に必要な情報をそろえる時期や、依頼の出し方を見直せないかを考えます。法定手続き、給与、個人情報の扱いなどは、効率や好みだけで省略・変更しないことが大切です。

自分の負担が軽くなっても、社員や他部署に作業を移すだけなら、職場全体では問題が残ります。変更によって誰の仕事が増減するかも確認しましょう。

3.自分の裁量で試せることと相談が必要なことを分ける

自分用の作業メモを整えることと、社員の申請方法や回答期限を変えることでは、影響する範囲が違います。

社内ルールの範囲で自分が工夫できること、上司の判断が必要なこと、他部署と調整することを分けます。担当者の変更、承認の省略、情報の共有範囲などは、独断で進めないようにしましょう。

工夫できる範囲がわからない場合は、「この部分は自分で変更してよいですか」と、裁量の確認から始めても構いません。

4.変更案を一つに絞り、上司と相談する

一度にすべての業務を変えようとすると、相談の論点も増えます。まずは、負担の大きさや他の業務への影響を踏まえて、一つ選んでみましょう。

その際は、「何に困っているか」「どう変えたいか」「関係者への影響」「いつ振り返るか」をまとめます。変更案を自分で決めきれなくても、困っている事実と必要な支援を伝えれば、相談は始められます。

5.小さく試し、負担と業務への影響を振り返る

合意できたら、対象業務と試す期間を決めます。例えば「通常の書類確認依頼を対象に2週間試す」という設定も考えられますが、これは期間の一例です。月1回の業務なら、その業務の周期に合わせて確認日を決めます。

振り返るのは、自分の作業時間だけではありません。締切を守れたか、確認漏れが増えていないか、社員が相談しにくくなっていないかも確認します。問題があれば、続けることにこだわらず、修正や中止を相談しましょう。

待ち時間や差戻しなど、業務の流れそのものを詳しく見直したい場合は、トヨタ生産方式をヒントにした人事業務の改善手順で整理しています。

上司に相談するときの整理表と伝え方

困っている事実・変更案・影響・確認日をそろえる

相談の前に、次の四つを短くメモしてみましょう。数字がまだわからない項目は、推測で埋めず「今後確認する」として構いません。

相談メモの項目書いておくこと
困っている事実いつ、どの業務が重なり、何に支障が出ているか
変更案・必要な支援何を変えたいか、何を判断・支援してほしいか
関係者への影響社員や他部署の負担、期限、確認方法にどう影響するか
振り返りの時期いつ、何を確かめて継続・修正を判断するか

「忙しい」という感覚も相談の出発点になります。そこに具体的な業務や場面を一つ添えると、上司が状況を把握しやすくなります。

困っていることと、守りたい業務を一緒に伝える

例えば、随時の問い合わせと締切のある処理が重なっている場合は、次のように伝えられます。これは説明用の仮想例で、実在企業の改善実績ではありません。

給与の確認期間中も問い合わせが随時入り、確認作業を中断することが続いています。確認に集中できる時間を確保したいので、通常の問い合わせは窓口に集約し、決めた時間に回答する運用を試せないでしょうか。

緊急の連絡や個別の配慮が必要な相談は別に受けられるようにし、回答期限と連絡方法を決めたいです。対象の問い合わせに絞って試し、社員側の不便と確認作業への影響を一緒に確かめたいと考えています。

実際には、相談の内容に応じて機密性や対応の急ぎ方が違います。問い合わせを一律に公開の一覧へ集めたり、受付時間だけで緊急の相談を断ったりしないよう、運用を決めます。

また、すでに業務が回らず、変更案を考える余裕もない場合は、案の完成を待たずに相談してください。「今週の締切が重なり、現状ではすべてを終えられないため、優先順位と応援の判断をお願いしたい」という伝え方でも構いません。

自分だけの工夫で難しいときは、相談先を増やす

人員不足や権限の問題は、業務と負荷を示して相談する

一人分の勤務時間に収まらない業務量や、自分に決定権がない問題は、個人の段取りだけでは解決できない場合があります。

上司や経営者には、重なっている業務、締切、判断待ちの項目、対応できない場合の影響を示し、優先順位や分担を相談しましょう。「応援をつける」「期限を調整できる依頼を見直す」「判断する人を決める」など、会社としての対応が必要なこともあります。

人事担当者だからといって、すべての相談や判断を一人で引き受ける必要はありません。誰に確認できるか、誰が最終判断をするかを明らかにすることも、働き方を整える一歩です。

今後の方向性が見えないときはキャリア相談も使う

目の前の業務調整とは別に、「今後どんな経験を積みたいか」「何を大切に働きたいか」を整理したい場合は、キャリアコンサルティングを利用する方法もあります。

厚生労働省は、ジョブ・カードを、生涯を通じたキャリア・プランニングや職業能力の整理に活用するツールとして案内しています。マイジョブ・カードの在職者向けページから、作成方法や相談に関する案内を確認できます。

キャリア相談で自分の考えを整理することと、会社の業務量や担当を決めることは別です。相談を通じて見えた希望や課題を、職場で何について話し合うかにつなげていきましょう。

よくある質問

強みが思いつかないときはどうすればよいですか?

大きな実績から探す必要はありません。「説明を頼まれた」「不足書類に気づいた」「初めての業務を調べて進めた」など、実際にした行動を書いてみてください。可能であれば、同僚や上司に「どのような場面で役に立てていましたか」と聞く方法もあります。一つの評価だけで、自分の適性を決めつけないようにしましょう。

苦手な業務は担当から外してもらうべきですか?

苦手と感じる理由によります。経験不足なら確認相手や学習の機会、締切の集中なら分担や日程の調整が必要かもしれません。担当変更も選択肢の一つですが、まずは負担の原因と必要な支援を整理し、職場の状況を踏まえて相談します。

資格取得や転職を先に考えた方がよいですか?

今の困りごとが、知識や経験の不足なのか、業務量や職場の体制なのかを分けて考えましょう。資格取得で人員不足が解消するとは限らず、働き方の見直しが必ず転職を意味するわけでもありません。

学びたい分野が見えたら、担当業務に合わせた人事・労務の資格の選び方も参考になります。今後の選択に迷う場合は、キャリア相談も使いながら整理していきましょう。

まとめ|次に相談したいことを一つ書き出す

ひとり人事が自分らしく働くためには、大切にしたいことと、経験から見える強み、今の負担を分けて考えることが出発点になります。

担当業務を見渡したら、見直したいことを一つ選び、困っている事実、必要な支援、関係者への影響をまとめてみてください。上司と合意した範囲で小さく試し、仕事の質と負担の両方を振り返ります。

まずは「今、見直したい業務」と「誰に何を相談したいか」を一つずつ書いてみましょう。自分だけで答えを出しきらず、職場の人と調整しながら、続けられる働き方を考えていくことが大切です。

参考資料

タイトルとURLをコピーしました