働き方改革とは?中小企業人事が確認する主要制度と実務チェックリスト

オフィスで資料を確認する3人のビジネスパーソン 人事労務

「働き方改革に対応してください」と言われても、残業を減らすことから始めるのか、年休の取得状況を調べるのか、迷うことがあるかもしれません。

中小企業の人事が最初に行うのは、労働時間、36協定、年次有給休暇、待遇差について、自社のルールと実際の運用を照合することです。そのうえで、育児・介護との両立や、休息を確保する働き方を整えます。

この記事では、初めて労務を担当する人事向けに、制度の全体像と確認する資料を整理します。2026年10月7日時点の厚生労働省・e-Gov・労働局等の一次資料を確認し、法的義務、努力義務、ぼっち人事LABの実務提案を区別しています。

1.働き方改革とは、働く人の事情に応じた選択肢を整える取組

働き方改革は、長時間労働を是正し、雇用形態による不合理な待遇差を解消するなど、働く人がそれぞれの事情に応じた働き方を選べるようにする取組です。

少子高齢化や人手不足への対応も背景にありますが、制度を導入すれば自動的に生産性が上がるわけではありません。人事実務では、勤務の実態、休暇の取りやすさ、待遇の決め方を具体的に確認する必要があります。

「働き方改革関連法」は、労働基準法など複数の法律を改正した法律の通称です。各制度は段階的に施行されています。また、育児・介護休業法のその後の改正など、働き方を支える別の法改正もあります。すべてを「2019年に始まった一つの制度」と捉えず、現在の義務を項目ごとに確認しましょう。

参考:厚生労働省「働き方改革」の実現に向けて

2.中小企業人事が確認する主要制度を一覧で押さえる

中小企業にも、労働時間の上限や年休取得、待遇差に関するルールは適用されています。「小さな会社だからまだ対象外」と判断しないようにしましょう。

確認する制度区分自社で最初に見るもの主な適用時期
時間外労働の上限規制法的義務36協定、勤怠記録、毎月・年間の集計一般則:大企業2019年4月、中小企業2020年4月
年5日の年休取得・年休管理簿法的義務付与日、付与日数、取得日数、取得期限企業規模を問わず2019年4月
月60時間超の時間外労働の割増賃金法的義務勤怠と給与計算の設定大企業2010年4月、中小企業2023年4月
パート・有期雇用労働者の不合理な待遇差の禁止法的義務賃金規程、手当、賞与、福利厚生、仕事内容大企業2020年4月、中小企業2021年4月
待遇差等の説明を求められる旨の雇入れ時明示法的義務パート・有期の労働条件通知書等企業規模を問わず2026年10月1日
勤務間インターバル制度の導入一般の事業主は努力義務終業から翌日の始業までの休息2019年4月。業種・職種の個別規制は別途確認

建設事業、自動車運転業務、医師等の時間外上限は、2024年4月から適用されていますが、一部に特例があります。自社の業種だけでなく、社員が担当する業務も確認してください。

フレックスタイム制の拡充や高度プロフェッショナル制度は2019年4月からの制度ですが、すべての会社が導入する義務を負うものではありません。導入する場合には、それぞれの法定要件を満たす必要があります。

根拠:厚生労働省・時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金特集、月60時間超の割増賃金リーフレット

3.労働時間は「会社の定め」と「法律の基準」を分けて確認する

法定労働時間は、原則1日8時間・週40時間

労働基準法が定める法定労働時間は、休憩を除いて原則1日8時間・週40時間です。一方、会社が就業規則や労働契約で定める勤務時間を「所定労働時間」といいます。

例えば、通常の労働時間制で所定が1日7時間の社員が8時間働いた場合、所定を1時間超えていますが、その1時間が直ちに法定時間外労働になるとは限りません。週の時間も合わせて判断し、会社の賃金規程上の支払いも別に確認します。

会社の休日と、労働基準法上の法定休日も分けます。法定休日は原則毎週1日、または4週間を通じ4日以上です。「土曜日に働いた」だけで法定休日労働と決まるわけではありません。

なお、商業、映画・演劇業(映画製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業で、常時10人未満の労働者を使用する事業場には週44時間の特例があります。1日8時間は同じです。変形労働時間制やフレックスも計算方法が異なるため、一般の勤務と同じ計算を一律に当てはめないようにします。

根拠:e-Gov・労働基準法32条・35条、厚生労働省・週44時間の特例

勤怠記録と実際に働いた時間を照合する

人事は、就業規則だけでなく、始業・終業の記録と実際の業務を確認します。タイムカードやパソコンの使用記録などを基礎に、自己申告とのずれがあれば実態を調べます。

ぼっち人事LABでは、最初の点検として次の3点を確認することを提案します。

  • 始業前の準備や終業後の片付けが、記録から抜けていないか
  • 「残業申請がない」という理由だけで、実際に働いた時間を集計から外していないか
  • 在宅勤務でも、始業・終業と休憩を確認できるか

管理職という社内の呼び名だけで、労基法上の管理監督者とは決まりません。また、管理監督者でも、健康確保のための労働時間の状況の把握は必要です。

参考:厚生労働省・労働時間、休日、適正な把握のガイドライン

勤務間インターバルと特別な労働時間制度は別に見る

勤務間インターバルは、終業から次の始業までに休息時間を確保する仕組みです。一般の事業主には導入の努力義務があります。「すべての社員に一律11時間の休息を確保する法的義務」として説明する制度ではありません。自動車運転者や医師等は個別の休息・健康確保ルールを確認します。

フレックスタイム制を使う場合は、就業規則等と労使協定、清算期間などの要件を確認します。清算期間の上限は3か月ですが、残業を自由に翌月へ移してよいという意味ではありません。

高度プロフェッショナル制度も、一般社員の残業代をなくすための制度ではありません。対象業務が限定され、年収1,075万円以上の要件に加え、労使委員会の決議・届出・本人同意、休日や健康確保措置等が必要です。健康管理時間を把握し、年間104日以上かつ4週間で4日以上の休日を確保します。年次有給休暇は適用除外になりません。

参考:厚生労働省・勤務間インターバルの努力義務、フレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度・2026年版

4.36協定と時間外労働の上限をセットで確認する

原則は月45時間・年360時間

法定労働時間を超える時間外労働や、法定休日労働をさせるには、原則として36協定の締結と所轄労働基準監督署への届出が必要です。

一般則の時間外労働の上限は、月45時間・年360時間です。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では、月42時間・年320時間となります。

36協定を届け出ても、労働時間の集計や上限管理が不要になるわけではありません。協定に定めた時間が法律の上限より短い場合は、その協定時間も守ります。

特別条項でも、すべての上限を守る

通常予見できない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定により原則の限度時間を超えることがあります。その場合も、一般則では次の条件をすべて守る必要があります。

確認項目一般則の上限法定休日労働を含むか
1年の時間外労働720時間以内含まない
1か月の時間外労働と休日労働の合計100時間未満含む
2・3・4・5・6か月の各平均80時間以内含む
月45時間を超える月数1年につき6か月以内45時間の判定には含まない

1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合、最後の行は「月42時間を超える月数」で確認します。単月100時間未満と複数月平均80時間以内は、特別条項の有無にかかわらず守る必要があります。

ここでいう休日労働は、労基法上の法定休日の労働です。年720時間以内でも、休日労働を足して単月100時間以上になれば、一般則の上限に抵触します。 年平均だけを見るのではなく、各月と2~6か月の各平均を管理してください。

根拠:e-Gov・労働基準法36条

建設事業・運転業務・医師等には別の取扱いがある

2024年4月から上限規制の適用が始まった事業・業務も、同じ数字を一律に当てはめることはできません。

  • 建設事業:原則は一般則です。災害の復旧・復興事業には、単月100時間未満・2~6か月平均80時間以内の規制が適用されない特例があります。
  • 自動車運転業務:特別条項の年間上限は時間外労働960時間以内です。法定休日労働はこの960時間に含みません。単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超は年6か月までという一般規制は適用されず、別途、改善基準告示の拘束時間・休息期間等を確認します。
  • 医業に従事する医師:時間外・休日労働の個人上限は、A水準の年960時間、B・連携B・C水準の年1,860時間など、水準別です。月の上限や例外、健康確保措置、副業・兼業先との通算、医療機関ごとの協定上限も確認が必要です。

鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業は一般則が適用されています。新技術・商品・役務の研究開発業務には上限規制の適用除外があるため、該当する場合は健康確保措置等と合わせて専用資料で確認します。

参考:厚生労働省・事業、業務別の上限規制、医師の上限規制と健康確保措置

届出の点検と給与計算は、担当を分けてもつなげる

36協定について、人事が最初に確認するのは、有効期間、対象者・業務、協定時間、適正な労働者代表との締結、届出、社員への周知です。代表者の選び方や届出手順は、中小企業の36協定ガイドで確認できます。

給与計算では、月60時間を超える法定時間外労働の部分に50%以上の割増賃金率が適用されているかを確認します。中小企業も2023年4月から対象です。法定休日労働は、この60時間の算定には含めません。

割増賃金を払うことと、労働時間の上限を守ることは別の義務です。人事と給与担当で、同じ勤怠記録を基に確認できるようにしましょう。

根拠:厚生労働省・中小企業の月60時間超の割増賃金

5.年次有給休暇は「付与」と「年5日の取得」を分けて管理する

対象者と、付与日から1年以内の期限を確認する

年5日の取得義務の対象は、法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者です。正社員だけでなく、条件を満たすパート・有期雇用労働者や管理監督者も対象になります。

対象者について、付与日から1年以内に5日を取得させる必要があります。会社の年度で一律に集計してよいとは限らないため、社員ごとの基準日を確認します。前年度の繰越分を足して残日数が10日以上となるだけでは、対象者の判定には使いません。

なお、5日義務の対象でない人にも、要件に応じた年休の付与は必要です。「パートだから年休なし」としないようにしましょう。

根拠:e-Gov・労働基準法39条

取得済みの日数を見て、不足分に対応する

本人の請求や計画的付与で取得した年休は、年5日の取得に数えます。すでに5日取得している人に、会社がさらに5日を指定する制度ではありません。

不足分を会社が時季指定する場合は、あらかじめ本人の意見を聴き、意見を尊重するよう努めます。半日取得は0.5日として数えられますが、時間単位年休は年5日の取得に算入しません。

ぼっち人事LABでは、毎月、取得期限と不足日数を確認し、期限が迫る前に本人と上司へ連絡する運用を提案します。休む日だけでなく、業務の引継ぎ先も一緒に決めておくと、調整を進めやすくなります。

参考:厚生労働省・年5日の年休取得Q&A

年休管理簿は、付与日・取得日・日数を社員ごとに残す

年次有給休暇管理簿には、社員ごとに時季、日数、基準日を記録します。年5日義務の対象者だけを管理する帳簿ではありません。

保存期間は、年休を与えた期間中と、その期間の満了後5年間です。ただし、当分の間は3年間とする経過措置があります。必要なときに出力できる勤怠システム等で管理することも可能です。

帳簿やシステムを点検するときは、「付与日数」「残日数」「年5日に算入できる取得日数」「取得期限」が区別されているかを確認しましょう。

根拠:e-Gov・労働基準法施行規則24条の7・71条、山口労働局・年次有給休暇管理簿

6.同一労働同一賃金は、待遇ごとの差と理由を点検する

雇用形態の名前だけで支給対象を決めない

同一労働同一賃金は、同じ企業内の正社員とパート・有期雇用労働者などの間にある、不合理な待遇差を解消するための考え方です。

「全員の給与を同じ金額にする」という意味ではありません。待遇ごとに、その性質・目的と、仕事内容・責任、職務や配置の変更範囲、その他の事情を見て判断します。職務内容と変更範囲が同じ場合には、均等待遇のルールも確認します。

点検する待遇人事が確認すること
基本給能力・経験・成果等をどう反映し、差をどう説明するか
賞与・退職手当支給目的は何か。その目的がパート・有期にも当てはまるか
通勤・家族・住宅等の手当規程上の目的と実際の支給条件が一致しているか
休暇・福利厚生・教育訓練利用条件に差があるか。その理由を説明できるか

「正社員だから」「パートだから」という説明だけで終えず、規程と実際の仕事の両方を確認します。派遣労働者の待遇は労働者派遣法の別の仕組みで確認するため、自社で直接雇うパート・有期の制度と混同しないでください。

参考:厚生労働省・同一労働同一賃金ガイドライン

2026年10月改正に合わせ、通知書と説明資料を見直す

2026年10月1日から、パート・有期雇用労働者に関する省令・指針等の改正が施行・適用されています。中小企業も確認が必要です。

雇入れ時には、従来の明示事項に加えて、待遇差の内容・理由等について説明を求められる旨を明示する必要があります。自社の労働条件通知書等に、この案内が入っているかを確認してください。

改正ガイドラインでは、賞与・退職手当や各種手当、休暇、福利厚生等の考え方も充実しています。「以前に一度確認したから」とせず、現在の待遇を点検します。

待遇差について本人から説明を求められた場合は、内容・理由等を説明する義務があります。説明には、資料を活用した口頭説明、または必要事項を記載した分かりやすい資料の交付等を用います。説明の求めがなくても、契約更新時等に資料や案内を渡すことは望ましい対応として示されています。

ぼっち人事LABでは、賃金規程、雇用区分別の待遇一覧、仕事内容・責任の整理をそろえ、説明できない差があれば労働局等に相談することを提案します。

根拠:厚生労働省・2026年10月改正リーフレット、改正概要、e-Gov・パート有期法施行規則2条

7.自社の確認チェックリストで、担当者と次の行動を決める

制度の説明を読んだら、自社の資料を照合します。次の表は、ぼっち人事LABの実務提案です。確認できない項目を「問題なし」にせず、必要な資料と確認先を残しましょう。

チェック確認すること資料・確認先
□自社の業種・対象業務に一般則、特例、別制度のどれが当てはまるか事業内容、職務内容、公的案内
□所定時間・法定時間・法定休日を区別できるか就業規則、労働契約、勤務表
□実際の始業・終業と勤怠記録が一致しているか勤怠、パソコン記録、本人・上司
□36協定が有効で、適正に締結・届出・周知されているか協定、届出控え、代表者選出記録
□協定時間と法定上限を、各月・年間・複数月で管理できるか時間外/休日の集計、36協定
□月60時間超の割増賃金が正しく計算されているか給与設定、賃金規程、給与担当
□年休の付与と年5日義務の対象者を正しく判定しているか雇用条件、年休管理簿
□基準日・期限・取得日数を管理し、時間単位を分けているか年休管理簿、勤怠システム
□パート・有期との待遇差を、目的と実態に照らして説明できるか賃金規程、待遇一覧、職務内容
□2026年10月改正に対応した雇入れ時の明示を行っているか労働条件通知書、説明・相談窓口
□育児・介護の申出に対応できる規程と窓口があるか育介規程、案内様式、担当者
□休息不足や業務の偏りを把握し、改善を検討しているか勤務間隔、業務量、本人・上司

チェック後は、未確認事項ごとに「担当者」「確認期限」「次の行動」を記入します。例えば「年休の期限が分からない」なら、付与履歴の確認担当と期限を決めます。「残業が上限を超えそう」なら、月末を待たず上司と業務量・人員配置を調整します。

人事だけで決められないことは、経営者・現場責任者・給与担当に具体的な資料を示して相談します。制度の適用や運用に迷う場合は、厚生労働省の働き方改革推進支援センターなど、公的な相談先も利用できます。

8.確認結果に応じて、関連記事で具体的な手順へ進む

働き方改革を自社で進めるには、制度名を覚えるだけでなく、実際の手続や勤務の調整につなげることが大切です。今回の点検で見つかった課題に応じて、次の記事を確認してください。

育児・介護との両立支援は、男女を問わず働き続けるための制度です。2025年の育児・介護休業法改正による個別対応等も、中小企業で確認が必要です。休業、休暇、勤務時間の調整にはそれぞれ条件があるため、具体的な相談では各制度の手順に沿って対応しましょう。

参考:厚生労働省・育児介護休業法のあらまし

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